ひぐらしのなく頃に 神落し編
2006/09/06_232654羽入1
再びここにきた。地上でも地下でも、世界のどこでもないところ。
目の前にあるのは、とても大きな樹。僕がここに来るたびに一回り大きくなる。だけど、不自然に大きな樹はあまりにも不恰好で……僕の心を掻きむしる。
スラリと伸びる幹の先端が急に大きな瘤になり、突然途切れる。そこが昭和58年6月。樹の年輪一つ一つは……僕たちの惨劇の歴史だった。
『いらっしゃい。「皆殺し編」見たわよ。今回は惜しかったわね』
ガン、と頭を叩かれた様な気持ちになる。さっきの世界でレナに言われた言葉が僕を殴り付ける。
『“あなたも信じてくれたなら、きっと奇跡が起きた。”』
くすくすくす……冷たい笑い声が僕を突き刺す。とても痛い。とても悲しい。でも、僕は涙も言い訳も全て飲み込んで、傷口から言葉を探し出す。
「その……通りなのです。僕は弱かったのです」
『……へえ?』その驚きは、なぜか楽しくてしかたがない様子が漏れ出しているような気がした。
「仲間……そう、仲間が教えてくれたのです。僕はすっかり忘れていました。“強い意思”が世界を創ることを」
『……いいえ、忘れている振りをしていただけよ。』
振りでも同じこと。僕はその同情を撥ね除けた。
「仲間はあれほど強くなったのに、僕は信じることができなかったのです。痛くて、怖くて……諦めてしまったのです…………。でも、僕は」
懐に手を入れ、小さな塊を取り出す。そこら中が欠け、すっかりくすんでしまった小さな……とても小さなコイン。
僕の持つ、全て。
「今度は信じるのです。奇跡は必ず起きる」
くすくすくす……今度の笑い声は、さっきの笑い声と何も違わないはずなのに、なぜかとても暖かった。
『あらあら、ダメよ。そんなのじゃ』
僕のコインの横に、大きくてピカピカのコインが現われる。大きなコインと小さなコインは、クルクルと回りながら交わると、霞のように消え去った。
『奇跡を起こすにはこれぐらい大勝負に出ないとね。私も全部賭けることにするわ』
「……ありがとうなのです」緊張で声が霞む。
『じゃあ、最後のゲームを始めましょうか。遣り甲斐があるわ』
「最後の……ゲーム」
これが最後。今回も負ければ……この樹は枯れ、何も生み出すことはないだろう。
怖い。苦しい。……でも、僕を含め、みんなの心を一つにしなくては奇跡は起きない。それ程までの“強い意思”がこの樹を抑え付けている。僕は……奇跡を見たかった。
僕の悲壮感とは裏腹に、とても楽しそうな声で彼女は言った。
『これだけ張り込むんですもの。ハッピーエンドじゃないと許さないんだから』
僕は少しだけ肩の力を抜いて深呼吸すると、微笑んでこう言った。
「仲間たちがいれば、ハッピーエンドに間違いないのです」
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