ひぐらしのなく頃に 神落し編
2006/10/20_021925悟史
僕は、もう長い間ここにいる。昼とも夜ともつかないたそがれの中。
ここには何もない。空もなく、大地もなく、光もなく、闇もない。ただ、無限に続く白だけがあった。この純白を犯す赤いシミ。それが僕だった。
赤。僕の染まった罪の色。血に染まった赤。
僕が望んだものは……ささやかなものだったと思う。だけど、その願いは、僕にはとてもぜいたくなものだったのかもしれない。僕は少しずつ追い詰められ、身を打たれ、魂を削られ、全てをすり潰されて……結局は罪に塗れてしまった。
ここには、もう、僕しかいない。叔母もいない。詩音も、仲間もいない。沙都子もいない。……そして、もう一人の僕もいない。助けてくれる人も、助けを求める人も、憎む人も、愛する人も、誰もここにはいない。
僕は、もう長い間ここにいる。無限に広がる空間の中。
ここには僕しかなかった。僕の意識はこの空間全てに拡散する。拡散した僕の意識は、空間に浮ぶ赤いシミ……僕を見つめていた。今なら……僕は僕を見つめることができる。
僕は、仲間の気遣いに感謝することができなかった。僕は、詩音の優しさに気付くことができなかった。僕は、沙都子の弱さを理解することができなかった。僕は、僕の……弱い心を認めることができなかった。だからこそ、……僕は罪に塗れてしまった。赤に塗れた僕の両手。その色が薄まることは、多分ないだろう。僕は空間に浮かぶ赤い罪……僕を見つめていた。
罪に塗れた僕は……もう僕ではなかった。仲間たちと共にいる僕でも、詩音の頭を撫でる僕でも、……沙都子をかばう僕でもなかった。罪を犯したのは必然ではなかったのかもしれないけれど、罪を犯した僕がここで独りいるのは仕方のないことだった。長い時間をかけて、僕はその考えに至った。
しかし、……僕は僕でなくなったけれども、僕はたった独りになってしまったけれども……それでも僕は……信じていた。仲間が僕に助けの手を差し伸べてくれることを、詩音が僕の側にいてくれることを、沙都子が僕に頼ることがなくなるほど強くなることを、……そして、僕が自分の弱さを認められるほど強くなることを。
そして、僕は終わりなき時のなか、祈りつづける。誰に祈るというわけでもなく、ただ祈りつづける。何を祈るというわけでもなく、ただ祈りつづける。今の僕がみんなのために、……そして自分のためにできるのは、ただ祈ることだけだけだから。
僕は、もう長い間ここにいる。終わりなく続く静寂の中。ただ独り