ひぐらしのなく頃に 神落し編
2006/10/30_024856小此木2
“終末作戦”の準備は順調に進む。
作業分担設定、タイムスケジュール、リソース割り当て、作業着手、情報収集、報告分析、進捗管理、計画調整。今のところ予想の範囲内。雛見沢と東京から小此木造園の社長室に送られる情報は、着実に計画が進行していることを示していた。山狗は破滅への階段を登りつづけている。
しかし……、しかし、俺はホンの少しだけ幸運を手に入れた。『野村』から急に指示された『東京』の裏金操作の揉み消し工作。…………“終末作戦”という規模の大きい作戦を遂行している最中に、全く別の作戦を割り込ませる『野村』の短慮には恐れ入るが、しかし今回はそれが助けになった。
揉み消し工作の遂行のために、かなりの裁量権を『野村』から与えられている。おかげで山狗が『東京』の回りで活動していても怪しまれることは少ない。俺はこの機会を捉え、貴重な予備軍の全て──山狗の人員の3割をこの工作に投入した。揉み消し工作に必要な人員を大幅に上回る規模の人員だ。首相回りや官邸などで“終末作戦”の工作を進めている人員を含めると、山狗の大半が東京に居ることになる。
当然、これだけの人員を割いたのは揉み消し工作を迅速に行うためではない。揉み消し工作と“終末作戦”に充てるリソースは最低限にして、可能なかぎり『野村』と『東京』の動向を探るよう指示している。この動きは『野村』や鷹野には気付かれていない。
今さら遅いのはわかっている。この動きを『野村』に知られたら危険なこともわかっている。しかし、俺は足掻かずにはいられなかった。“終末作戦”という破滅への袋小路を受け容れながら、まだ俺は“終末作戦”から逃げ出すことを諦めてはいなかった。
この博打には今のところ勝ち続けているようだった。東京に活動拠点を確保し、『野村』と鷹野の知らない通信手段を用意し、“終末作戦”のクライアントと『野村』に盗聴用の枝を張る。こちらも順調。
順調だが、……先はまだ見えない。希望の光の無いこの暗闇のなか、山狗は破滅に向かって進みつづける…………いや、まだ望みはある。…………望みはあるはずだ。……まだ