ひぐらしのなく頃に 神落し編
2007/12/24_163252富竹2
目ノ前に広がル光の渦。意味も無く瞬いテいる。
僕は呆然と、ソの瞬きを眺める。
目の前ノ光が、目まぐるシく変化し続ける。
しかし、僕はソの変化を意識すルことができない。
僕は、呆然ト光の瞬きを眺める。
意識も、──心も、コこにはなかった。
無い、とイうことも意識しなかった。
時の流れルことすらも意識シなかった。
全テのことに意味がなかった。
────目の前ノ光の瞬きガ、僕の身体ニ注がれている。
僕は────、いつのマにか、その瞬きを意識シていた。
少しずつ──少しずつ、ソの瞬きが意味ヲ持ちはじめる。
僕の意識も、その瞬キに合わせて少しずつ揺り起こされる。
────突然、僕は光の瞬きを理解した。時が流れ始める。
目の前に広がる岩肌。少し離れたところにある蛍光灯の灯りが、その岩肌に深い陰影を造りあげている。鼻をくすぐる湿った空気。どことなくスえたその空気は、ここが日常から切り離された異世界であることを僕に知らせていた。僕はベッドに横たわっていた。薄手の毛布が一枚だけ、僕に掛けられている。この部屋の冷気を防ぐには心許無いものだ。
僕は、上半身を起こそう────として、何かに引き止められる。腕を引き付けようとしたが──だめだった。拘束具の柔らかくて堅い感触。どうやら、僕はベッドに縛り付けられているようだ。
──まったく、一体何が起きているのか。僕が状況から取り残されていることだけはわかる。僕はまだ混乱する意識から記憶を引きずり出す。あれは混沌だった。敵対していたはずの園崎家と大石さんがあんなににこやかに話をしていたのも異常だし、こちら側の人間のはずの入江さんまでいたのはありえないことだ。──通常ならば。
僕は、身体をくねらせながら、どうにかして腰を右手のあたりに持ってくる。拘束具があまりしっかりと取り付けられていないのは幸いだった。ベルトの裏にある堅い感触を確認すると、少しホッとした気分になる。僕はその小型ナイフを慎重に引っ張り出す。
───それにしても、園崎家があそこまで詳細な情報を掴んでいるとは……入江さんは『知らない』と言っていたが、それも怪しいものだ。魅音ちゃんは『敵対するつもりはない』とも言っていたが……たぶん、『東京』は許さないだろう。頭の痛い問題がまた一つ増えたわけだ。
僕は、手を引き抜くようにしながら、手首に巻き付けられた皮ベルトに刃を立てる。皮ベルトの締め付けもかなり緩くなっているようだ。少しずつ腕が自由になっていくのを感じる。最後はブツッ、と音を立てて皮ベルトが切れる。僕は毛布を引き剥がすと左手の皮ベルトに取り掛かる。もうナイフは不要だ。再びベルトの裏にしまう。
───静か過ぎる。僕は世界でただ独り取り残されたように感じる。今はどのような状況なんだろうか?今は何日の何時なんだろうか。直感はそれほど時間が経っていないことを報せていたが、今のような状況では当てにならない。
両足も解放してベットから降りようとしたときに、僕は左腕に付けられた点滴に気付いた。傷にならないように気を付けながら引き抜く。チクリとした痛みに、僕は大袈裟に顔を歪める。
───ああ、そうだ。……鷹野さんはどうしたんだろう? 魅音ちゃんは、僕も『雛見沢症候群』の感染者だ、と言っていた。それは、鷹野さんの施した予防接種が役に立たなかったということを意味している。今まで実績を重ねていた薬が今回に限って効果を持たなかったというのは、とても信じられない話だ。……………………予防接種を施されなかった、という方が可能性は高いだろう。
ベットに腰掛け、身体と装備を確認する。目立った傷は無し。服装も、ここに来たときの格好そのままだ。メガネなどの小物は身に付けていなかったが、ベッド近くのテーブルにまとめて置いてあった。メガネを掛けても、どこか視界がボヤけてしまう。
───もし、予防接種を施されなかったということならば、一体何が起ったのか? 僕には理解できなかった。最も可能性が高いのは鷹野さんがすり替えたか──とても信じられないが──、あるいは看護師──小此木の部下──が入れ替えたか……。とても信じられない。入江とも考えられるが、『東京』の使いの者の予防接種用の薬を自由にできる権限を与えているとは思えない。僕には判らなかった。
僕の目の前には鉄格子があった。どうやら、僕は牢獄に入れられていたようだ。僕は立ち上がると鉄格子の扉に手をかける。扉は、ぎしり、と鈍い音を立てて開いた。牢獄を出て扉を閉めようとしたが、建付けが悪いらしく閉まらない。僕は諦めて扉をそのままに歩き始める。
───ああ、そうだ。鷹野さんに確認しなくては。僕には判らない。僕には理解できない。鷹野さんはそんなにも弱い人間では無いはずだ。まだいくらでも手はあるはずだ。鷹野さんにそれが判らないことは無いはずだ。──無いはずだ。無い、はずだ。
───ああ、確かめなくては、鷹野サンニ。
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